左手だけで作るきめこみパッチワーク
大分県別府市の横山雅常さん、詔子さんご夫妻。
詔子さんは、脳出血で倒れ右半身にまひが残るため、左手だけできめこみパッチワークを作り続けています。
雅常さんは、詔子さんの作品とともに、夫婦二人三脚の歩みについての講演活動も行ってきました。
今回は雅常さんにお話を伺いました。
横山雅常さん、詔子さんご夫妻
「平成10年から4年ちょっと入院をして退院の際に同室の方から薦められたのがきっかけで、きめこみパッチワークを知りました。それと一緒に、色鉛筆のスケッチも始めて。最初は子どもが書いたようなスケッチだったけど、少しずつ少しずつ上手になっていきました。きめこみパッチワークも、月に2~3個を作り続けています」
これまでに50点以上の作品を、家族や友人に贈り、さらに作品庫にしている部屋にも100点近くが置かれているそう。
「チラシを見て本人が作りたいものを選んで、失語もあるから注文は私がします。届いたものは、部品をはさみで切ったりするのは私。そこからは、布の番号と絵の番号を妻が合わせていって、チェックを少し私がして、あとは妻がすべてきめこんでいます」
まさに二人三脚の作品づくりです。
「完成したものを見ても、手直しするようなところはほぼない」と誇らしそうに話される通り、見せていただいた写真の作品はどれも、見本のようにきれいな仕上がりです。
きめこみパッチワークを作り始めて5年ほどたった平成23年には、町内のカフェ&ギャラリーで「左手だけの作品展」を開催。
「倒れた当時は55歳。現職の中学校の教諭だった。教え子をはじめ友達や世話になった人に作品を通して元気です、と伝えることが目的だった」その開催は、地元新聞にも紹介され、大人になった教え子たちの中には、地元ラジオ局勤務の方などもいて宣伝をしてくれたそう。
その結果、最終的には300名程の方との再会を果たすことができたそうです。
さらに、作品展の様子や来場者の方との記念撮影を集めて製本した写真集が作られました。
左手だけの作品展
「記念と記憶のために子どもたちが作ってくれたんです」
そして雅常さんには、作品展を見た教育関係や地域福祉関係の方から、講演の依頼が来るように。
「私も中学校の教員で、人権教育というものを担当していた。障がい者や高齢者などすべての人と共生する社会ということを教えていたんです。だから妻が倒れた時、少しは呆然としたけどすぐに、これまで教えていたことを自分が実践していけばいいと思った」
そして「二人三脚で焦らずゆっくり時間をかけて楽しい過ごし方をしていけばいい」と考えたそう。
現在は自宅の玄関や居間に詔子さんの作品を飾り、訪れる方々の目を楽しませ、話も弾ませているそうです。
「他の人は色々できることがあるけど、妻はスケッチときめこみパッチワーク一筋。きめこみの割合が少し多いかな」と笑う雅常さんは、始めの頃はリハビリで現状維持をしましょうと言われていたが、まさに時間をかけてゆっくりと上達していく様子に「このぐらいまでやろうと思えばできるということを伝えたい」と話します。
お話を伺い、ご夫婦やご家族が協力しあって楽しみ、喜びを増やしている姿に大変感動しました。
その楽しみのひとつにきめこみパッチワークを選び、続けていただいていることに本当に感謝いたします。
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