さくらほりきりの歩みとともに語る「和紙のあとり絵」

左:あとり絵・フクロウの仲良し親子/右:あとり絵・ピュアローズ


今年8月に新発売となった『和紙のあとり絵』

1980年代より発売され人気となった手作りが実に8年ぶりの復活。
なぜいま『和紙のあとり絵』なのか?
『和紙のあとり絵』の歴史は、さくらほりきりの歩みとともに語ることができます。

箱職人からの創業

さくらほりきりは、元は家業の箱屋で職人をしていた堀切彌太郎によって創業されました。贈答品の菓子の化粧箱などを作る職人です。
しかし1970年台のオイルショックにより、紙資源の不足から余分な包装を控える「ノーパック運動」が起こります。
仕事が激減した彌太郎のもとに、外国人向けに千代紙を貼った小タンスの見積依頼が届きました。
ぜひとも受注に繋げたいと試作品を作っていたところにある日、近所の主婦がやって来ます。そして試作品を見て「私にもちょうだい!」と言いますが、大切な試作品のため渡すわけにはいきません。

そこで、試作のために準備したボール紙など「材料のみ」を渡して帰ってもらったのです。
数日後、またやってきた主婦は「できたわよ!」と完成した小タンスを持ってきていました。
正直、「職人の自分にしか作れるはずがない。素人にはできない」と思っていた彌太郎は、きれいに完成した小タンスを見て「これだ!」と思います。
「誰にでも職人が作ったような箱を作れる商品を作ろう」そうして家業から独立する形で、さくらほりきりを創業しました。

小ダンス(イメージです)


実用的な和紙工芸品のヒット

最初は三段の小さなタンス、そして2つめに発売したティッシュケースが爆発的にヒットしました。
東京蔵前にあるお店のみでの販売でしたが、お盆時期に帰省のお土産などに使われ、気付けば全国から注文が入るように。そこから全国通販へと販路を広げていきました。
種々の和ダンスのほか電話台やリモコンラック、メガネ立て、ビデオテープ入れ、カセットテープ入れまで生活に使える様々なアイテムが『和紙工芸品』として発売されました。
100円ショップもなかった時代、日常の収納に使えるアイテムが喜ばれました。また、専業主婦も多かった頃で、地域の主婦同士でおしゃべりをしながら作ることで、豊かなコミュニティを築く手助けとなりました。

かつての和紙工芸品のチラシ


壁を彩る和紙のあとり絵の誕生

「家の中に自分で作った、しかもきれいな和紙の箱があってうれしい」と多くのお客さまから喜ばれる一方、「もう置くところがないわ、空いているのは壁だけ(笑)」というお声も聞こえてくるようになりました。
そこで、「では、壁に飾れるものを作ろう」と考え、さくらほりきりの強みである和紙を活かして『和紙のあとり絵』が誕生しました。
彩り鮮やかな友禅和紙と異なり、板締めやぼかしといった手染めの風合いを活かした、やさしく温かみのある和紙のあとり絵は、お客さまに大変喜ばれました。
絵など描いたこともない人が、まるで自分で描くように作り上げられることもまた、人気の一因でした。果物や花などのモチーフから、風景画までたくさんの商品が発売され、人気を博しました。しかし昭和から平成へと時代も変わり、生活も次第に変わってきました。
家の中は洋風になり、和調の絵がインテリアとして合わないというお声をいただくようになったのです。

1988年の和紙のあとり絵のチラシ



和紙から布へ。きめこみパッチワークの誕生

そこで生まれたのが、『きめこみパッチワーク』です。目打ちを使った『和紙のあとり絵』の技法を活かしながら、布を使いパッチワーク風の絵柄に仕上げるきめこみパッチワークは、そのデザイン性と作る時の心地よさですぐに人気となりました。
コットンを使った洋風のものから、ちりめんや金襴生地を使用した和風のものまで、さまざまな絵柄が生まれ、多くのお客さまに支持されてさくらほりきりの主力商品のひとつとなりました。

数々のきめこみパッチワークが誕生

 その後も、お客さまに喜んでいただけるよう『パウダーアート』や『らくらく型抜きアート』『シールはり絵』など色々な技法のオリジナルの手作りを発売してきました。2000年代に入り、気付けばこれらの商品が、多くの高齢者施設や病院の作業療法で利用され、たくさんのご注文をいただくようになり作って飾って楽しめるもの「誰にでも簡単に作れ、完成度の高い商品」の開発を心掛けていたことで、「出来ないことが多くなっても、子どもだましのようなことをさせたくない」というご担当者や、ご家族の方から高い支持をいただきました。多くの高齢者施設、病院などでご利用いただく中で、「きめこみパッチワークを長く続けてきたけれど、力が入らなくなってきた方がいて作ることが難しくなってきた。その他の簡単なものは、すぐに出来てしまい物足りない」というお話を伺うようになりました。そういう方には、『糸の詩シリーズ』をお薦めしてきましたが、開発や生産に時間を要する糸の詩シリーズではすべての需要を満たせませんでした。



時代に合わせた、和紙のあとり絵の復活へ

そんな時、かつて『和紙のあとり絵』をご愛用いただいていたお客さまのことを思い出しました。
病気で麻痺が残る体でしたが、器用に片手で和紙のあとり絵を製作されていました。
「和紙の濃淡が出る場所を考えて、自分なりに仕上げていくことが楽しい」と言われていました。
和紙のあとり絵なら、どんな方でもじっくりと楽しむことができるのでは、と再販売に向けて企画を開始しました。
近年、手染めの和紙を扱う職人の人数も減り、高齢化も進んでいる中で、安定した品質と、生産数の確保に奔走しました。
そうして染められた和紙は、すべて職人の手作業のため、板締めやぼかしの様子はひとつとして同じものはありません。だからこそ、同じ絵柄を作ったとしても、それぞれ個性的な作品となる「和紙のあとり絵」ならではの面白さがあります。
また現在の商品企画のノウハウも活かして、以前のものよりも作りやすいよう下絵ボードの素材を新たに探しました。
粘着力が強く、目打ちでなぞる際に和紙がずれずにでき、切れ端をミゾに少し入れることできれいに仕上げることができるなど、試作を重ねて最適なボードを見つけることができました。

そうして、今年8月に第一弾として「ピュアローズ」と「フクロウの仲良し親子」を発売しました。
今後も、新しい絵柄、新しいサイズと長くご愛用いただけるように開発をしていく予定です。


和紙のあとり絵の再発売は、お客さまの声を伺いながら、さまざまな気付きをいただき、ともに商品を作り上げてきたさくらほりきりの歴史の結果です。

和紙のあとり絵・ピュアローズ

990円(税込)
https://www.sakurahorikiri.co.jp/c/products/pk/pk007/prod_3585106


和紙のあとり絵・フクロウの仲良し親子

990円(税込)
https://www.sakurahorikiri.co.jp/c/products/pk/pk007/prod_3585114

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