これぞ職人技! 木目込みボディの製作工房へ潜入。



こんにちわ。

今年の新作「勇健兜差し(ゆうけんかぶとさし)」はご覧になっていただけましたでしょうか?
キリッとした凛々しいお顔の童のお人形は「木目込み人形」です。




◆木目込み人形って?

そもそも、木目込人形っていつどこで誕生したのかご存知ですか?

木目込人形は加茂人形とも呼ばれ、京都の下賀茂神社の祭事に使う柳筥(やなぎばこ)をつくった職人が、残った材料で小さな人形を作り、溝を付け、宮司の衣装の残り布を挟んで着せ付けたのが始まりであると言われており、300年近い歴史を持っています。

筋彫りに布の端を押し込む動作を「木目込む(決め込む)」ということから「木目込み人形」と呼ばれるようになり、江戸に伝わりました。

そして江戸の人形師により様々な工夫が加えられ、現在の木目込人形の様式が確立したといわれています。


さくらほりきりでも、この日本の伝統的な木目込人形のキットを企画・販売しております。
もちろん、誰にでも簡単につくれるよう、独自の工夫を盛り込んだキットです。

その中でも一番工夫を凝らしているのは人形の土台、ボディ。そのボディをさくらほりきり用に長年作ってくださっているのが「森田人形店」さんです。

そこで…

今日は、さくらほりきりの木目込み人形の開発担当者に同行し、「人形のまち岩槻」にある、森田人形店さんにお邪魔してきました!




◆岩槻ってどんなところ?

岩槻(いわつき)は埼玉県の東部に位置しています。

ここには、雛人形を売るお店が50軒ほど軒を連ねています。


江戸時代、日光東照宮の造営、修復のために集まった工匠たちが、そのまま城下町として賑わいのあった岩槻に住み着いて、彫刻の技術を活かして人形づくりを始めたと言われている歴史のある街です。

現在、「江戸木目込人形」・「岩槻人形」が経済産業大臣から伝統的工芸品として指定され、生産量・生産額とも日本一の人形のまちとして有名です。

最近では、NHK 大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一ゆかりの市松人形を、岩槻人形協同組合の県認定伝統工芸士が修復したニュースも話題になりました。



◆温かく迎えてくださった森田社長

この日は、さくらほりきりの木目込人形キットの開発担当・阿部の打ち合わせに同行させて頂きました。

店内にはこれまでに作成された人形がずらり!
その数の多さにびっくりしましたが、ここにあるのはほんの一部だけだそう。

来年の干支「寅」の人形も、すでにこんなにたくさんの形が作られていました!


さくらほりきりでは、ボディに筋彫り(すじぼり)を入れる工程を森田人形店さんにお願いしています。

木目込人形のお教室などでは、この筋彫りも自分でしなければならなかったり、掘られていても浅かったりと初心者が作るにはちょっとハードルが高いのです。

そこで初心者でも作りやすいように、しっかりと布を木目込めるよう、さくらほりきりのキット専用に、一般的なものよりも深くしっかり溝を彫っていただいております。

右が筋彫りをする前のボディ、左が彫ったあとのボディ


社長の森田さんに岩槻の人形の歴史や、コロナ下でのワークショップの様子、木目込みの技法を活かした新しい取り組みなどをお伺いしていたところ、見慣れない不思議な形のお人形を発見。

これは一体???


<森田社長>
「これは「犬筥(いぬばこ)」という張り子で作られた箱で、 雌雄で一対になっています。犬は安産なことから、お嫁入り道具やひな祭りの丁度品として女性に幸せを呼ぶお守りとされてきたんです。
今でもお雛様とともに飾ったり、子供部屋に置いてお守りにしたりされているんですよ。」


そうなんですね!犬筥、初めて知りました…。
見せていただいたこちらは特に手の込んだお品で、鮮やかな彩色はもちろん、立体的な金彩まですべて手書きでつくられているそう。
一口に節句人形と言ってもいろんな種類のものがあるんですね。
また一つ勉強になりました!


その横では担当者・阿部が、6月の新製品である寅年の木目込み人形の最終打ち合わせを行っておりました。

初心者でも失敗なく完成できるキットであることが、さくらほりきりのモットーです。それは木目込み人形でも同じこと。


「ここの溝は難しいので無くしましょう。反対にこの部分は線を追加して…」


慣れている人だけでなく、初心者の方にも簡単に、楽しく作って頂きたい。

そして出来上がりに満足してもらいたい!

その一心で、試作→修正→試作、を繰り返していきます。

また、試作でうまく木目込めなかった部分の上手な木目込み方も、直接アドバイスをいただいておりました。


「この部分はね、ここを先にきめこむと…ほら!」

「なるほど!!」


いただいたアドバイスは説明書にもしっかりワンポイントアドバイスとして載せます、とのこと。

ボディはもちろん、説明書も皆様によりきれいに作っていただけるよう改良を重ねております。


そしてこの日は、職人さんがボディに溝を彫っている様子を見学させていただくことができました!
高速で回る丸い歯に、ボディを当てながら一定の深さで彫っていきます。

てっきり、彫る部分にガイドを引くのかと思っていたのですが、なんのガイドも無しにフリーハンドで彫っていきます。

これぞまさに職人技!!!

特別に動画を撮らせて頂いたので、その職人技を是非御覧ください!




◆ ◇ ◆ ◇ ◆


木目込人形のボディができるまで
<さくらほりきり編>


◎原型を作る

まずは油土(油粘土)で原型を作ります。

奥にあるものが原型、手前にあるものがその原型を元に作られたサンプルです。


◎型を取る

作った原型を木枠の中に入れ、樹脂を流し込んで人形の型をとります。
この木枠もしっかりと隙間なく噛み合うように森田社長が工夫を凝らしたものだそう。
この樹脂でつくった型のことを「かま」と呼ぶそうです。
かまは人形の前部分と後ろ部分に分かれるように作られています。


◎ボディの材料は桐粉

木目込人形のボディは国産の桐のおが屑から作られています。
海外製のものも試したことがあるそうなのですが、国産のものに比べ固くなってしまうそう。

そしておが屑の大きさにもこだわりがあります。
細かいおが屑(桐粉)は仕上がりはなめらかでキレイだが、反面割れやすい。
なので作る人形の大きさに合わせて、少し大きめのおが屑を強度が出るようにブレンドしているとのこと。

この違いわかりますか?左が少し粗めのもの、右が細かいものです。

小さい人形の場合は強度はそこまで必要ではないので細かいものを多く使い、人形のサイズが大きくなるにつれ、粗めおが屑の分量を増やしていきます。



◎おが屑にのりを混ぜる

ブレンドしたおが屑にしょうふ糊をまぜて桐塑(とうそ)にします。

しょうふ糊とは、小麦粉から取り出したデンプンを原料とした接着剤で、日本画や書の表装や修復に昔から使われてきたものです。

水で溶いて、蒸煮して一晩置いたものを使用します。

先程のおが屑にしょうふ糊を混ぜる作業も職人さんの勘が命。

毎日の温度や湿度、桐の粉の状態などによって配合が変わってくるそうです。



◎ボディを型抜きする

かまの内側に離型剤を塗り、桐塑を詰め、中を空洞にするために上から一定の力でプレスをかけます。
中までぎっしり詰まっていると乾くのにとても時間がかかってしまうためです。

前のかまと後ろのかまをあわせ1つに合体させます。



◎型から外し、乾燥庫でしっかり乾かす

型から外されたボディーが次に運ばれていくのはこちらの乾燥庫。
こちらは24時間ずっと約80度に保たれていて、この中で最低3日はしっかりと乾かします。

乾燥したボディはこの後、バリをとったり、ヒビや欠けなどを整える専門の職人さんのところへと運ばれます。

何人もの職人さんが分業でこれらの作業を行っておられます。



◎筋の位置決めや微調整を行う

完成したボディを次に待ち受けるのは筋彫りの工程ですが、ここでもさくらほりきりと森田人形店さんのこだわりは続きます。
作って頂いたサンプルのボディで試作をし、修正や調整があれば、今回のようにデザイナー自らお店に足を運び打ち合わせをすることもあります。

その打ち合わせを元に、職人さんが調整を行います。

これを何度か行い最終的に彫る線が決まります。



◎筋を手作業で入れていく

そして本番の筋彫りの工程に入ります。
使う専用の機械はこちら。

長い軸の先端には丸いのこぎりのような歯がついています。
これを高速回転させ、ボディを一つ一つ手作業であてながら筋彫りをしていきます。

彫る溝に合わせ、何種類もの歯を使い分けます。


最初はこんなに大きかった歯も、毎日研ぎながらつかっていくうちにこんなに小さく!
小さい歯は細かい部分の筋彫りに必要なので、まだまだ大活躍します。


一つひとつ職人さんが手作業で筋彫りをしていきます。

さくらほりきり用のものは、よりきめこみやすくする為に、溝が深めに彫り込まれているのが特徴です。



さくらほりきりオリジナルボディの完成です!!




さくらほりきりのキットには、このようにメーカーさんと二人三脚の創意工夫がたくさん詰まっています。

今後もキットに使われているちりめんや金襴生地のメーカーさんや、型抜きなどの加工をしてくださっている会社さんなど、キットに関わる日本の職人さんの技術やこだわりをお伝えしてまいります!



森田人形店

埼玉県さいたま市岩槻区宮町1-1-3
048-756-2417
8:30~17:30 第1・3土曜、日曜祝日定休

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