【特集】久月さんでお雛様について学んできました。
毎年3月になるとワクワクするひなまつり。
職業柄私だけでしょうか?
3月3日にお雛様を飾って、女の子の成長を願うということは知っていましたが、ふと「なぜ雛人形を飾るのか」といった詳しいことまでは知らないことに気がつきました。
この際、しっかり学ぼうと色々調べていく中で辿り着いたのが、歴史ある人形専門店の久月さん。
さくらほりきりのほど近く、浅草橋総本店を構えられている久月さんにお話を聞こうと伺わせていただきました。
質問させていただいた内容はこちら。
- 雛人形を「飾る」意味
- お雛様を「贈る」意味
- 選ばれるお雛様の傾向
- 人形へのこだわり
- 人形の表情について
- 今だからこそ伝えたいこと
お答えいただいたのは、
株式会社久月 専務取締役 横山久俊さん。
※2021年12月現在、代表取締役社長に就任されています!
貴重なお時間を頂戴し、丁寧にお答えいただきました。
大切な初節句、お雛様選びの参考になればと思います。
人形の久月、行ってみた。
さくらほりきりから約2分。
こちらが「人形の久月 浅草橋総本店」でございます。
中へ入ると、早速豪華な7段飾りに目を奪われます。
早速ですが、雛人形を飾る意味を教えていただきました。
▶︎ 雛人形を「飾る」意味について教えてください。
雛人形を飾る理由は諸説ありますが、
1つ目は「身代わり人形の信仰」があります。
平安時代の貴族が、我が子の代わりに生涯受けるであろう『厄』を人形に身代わりとして受けてもらうようにしたのがスタートとされています。天児(あまがつ)や這子(ほうこ)が原型だと言われています。
2つ目が、「五節句の考え」
1月7日、3月3日、5月5日…など、日本には豊かな四季の中で生まれた「節句」という文化があります。その節句は、太陰太陽暦とうまく合致して、日本に定着していったものとなります。太陰太陽暦の農業の季節の切り替えの際、体力を得るために栄養価のあるものを食べるというお祭りから考える説があります。
3つ目は、諸説ありますが「ゾロ目が揃うと良すぎて良くないという話」
陰と陽の考えに基づき、「陽と陽が重なると陰に落ちる」という説です。陽をゾロ目に例えた例ですね。
陰が陰に落ちるので、供養して陽に戻そうとする。「節」目に「供」養する、節供から文字が変わって「節句」という説です。
最後に、平安時代でよく用いられる「ひいな遊び」からくるもの。
ちいさい子供のおままごと遊びからきてるものです。その辺の風習が織り混ざったものがひな祭りだとも言われています。
▶︎ 雛人形を「贈る」意味について教えてください。
飾る意味と同じになりますが、雛人形はその子にとっての「魔除け」となります。
特に平安時代当時は生まれたばかりの子供は亡くなる確率も高かったため、できるだけ早めに身代わりとして『厄』から守ってください、の意味を込めて贈られてきました。
羽子板や破魔矢も同様の意味がありますね。
ーーーー昔から人形には重要な意味が込められていたんですね。
ちなみに、店舗には三世代で来られる方が多いですか?
そうですね。おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そしてお子様。
それぞれ好みの傾向などがあるので、意見を聞かれる際には板挟みになることもありますが(笑)そういう時は、雛人形を飾る担当になる方が気に入ったものにしてくださいとお伝えしています。
ーーーーそれはなぜですか?
買うだけではなく、もちろん飾っていただきたいので。
飾る人が気に入ってないと、飾らなくなってしまうじゃないですか。迷われた場合は参考にして欲しいです。
▶︎ 昔に比べて選ばれるお雛様の傾向は変わっていますか。
この10年20年の話になりますが、7段飾りから3段になり、それも等しく減って来ています。
大きなものよりも、そんなに大きくないものがいいよねと。
その理由は「発想の変化」です。
ーーーー発想の変化ですか。
元々、日本人は今よりも狭いところに住んでいて、家具を動かして生活するのが普通でした。
ひな祭りの時は家具をどかせばいいよねっていう考えの人が多かったため7段飾れた。でも、西洋化に伴い家具を動かすという概念がなくなり、「うちが狭いからこれしか飾れないよね」という考え方に変わっていったのが要因です。
今の家はベッドなどもありますし、住居は昔よりも広いはずですが、そもそもの発想が変化したというわけです。
ーーーー「発想の変化」は予想外でした。確かに自分の家で飾る際は家具を移動させて飾っていました。今は置けるスペースに。これは発想の変化ですね。
▶︎ 人形へのこだわりを教えてください。
人形と周りのセットのバランスが一番だと思っています。色合いや大きさなど。いいものはバランスが取れています。
安いものでも高いものでもこだわりとしてそれはもっていたいです。
次に、接客。その人形が良いか悪いかは二の次で、本人が気に入ったものを選んでもらうような接客を心掛けています。
ーーーーいいものはバランスが取れている。人形に限らず、確かにその通りだなと感じました。
▶︎ 人形の表情へのこだわりについてお聞かせください。
日本人形の顔って、怖いと感じたことありませんか。
いい人形ってちょっと顔が怖いけど、表情が変わるんですよ。見る角度や自分の心理状況によって、顔が変わるのがいい顔だと私は思っています。
例えば能面。顔を見上げれば笑っていて、下げれば悲しい顔になる。日本人形はその影響を受けている。自己の心理状況の投影です。見ていることにより自分の精神状況との対話となりえると思っています。
ただ、この考え方は世の中の流れとは逆行していますよね。
ーーーー逆行ですか?
今の世の中は可愛い、かっこいいなど、わかりやすいのが主流です。わかりやすいものが求められるけれども、あんまり可愛すぎると、「可愛い」しか表情がなくなってしまうんですよ。
そういうものも大切ではありますが、私からすると奥行きがないように感じてしまいます。
ーーーー奥行きとは?
笑ってもいないし、悲しんでも怒ってもいない。感情がわからない。だから気になってしまってずっと見ていられるのが、奥行きだと思っています。そういうものは見ていても飽きません。自分の心理も反映されているんですよね。悲しいときは悲しそうに見えてしまったり、楽しいときは楽しそう見えたり。
淀みや深みがあったほうが面白いじゃないですか。飽きがこない。いい顔というのはそういうものだと思っています。
ただ、人形として奥行きはあってしかるべきものなんだけれども、そういう表現をどう現代社会の伝統として伝えていくかは難しいのが本音です。
淀みや深みは、日本の持っている人形の特徴。
可愛いものは他にいくらでもあるから、私たちはそれを大事にしたいと思っています。
この日本人形の良さをどう伝えていくかが、今後の課題だとも思っています。
ーーーー日本人形の魅力について再確認できる深いお話ですね。難しい課題だと思いますが、是非伝えて続けて欲しい魅力だと感じました。
▶︎ 最後に、いまだからこそ伝えたいことはありますか。
魔除けという意味では古来より変わってないので、むしろコロナ禍だからこそ、お部屋に人形をだして気持ちを和らげてほしいです。
お子様のためにだけじゃなくても、自分のために飾るのもおすすめしています。
ーーーー自分のために買われる方もいらっしゃるんですか?
もちろんいらっしゃいます。人形は精神的に豊かになる。家にいる時間も長い今だからこそ、季節を感じるためにも、お部屋に人形を飾っていただきたいです。
ーーーー雛人形は季節を感じるのにぴったりですね。心が和らぎます。
いかがでしたでしょうか。
様々なお話を聞くことができ、お雛様本来の意味から、人形の持つ力まで、大変為になることを教えていただくことができました。
このご時世だからこそ、気持ちも安らぐ思いの伝わるお人形たち。
健やかな成長を祝う気持ちを込めて、贈り物にぜひご検討ください。
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